ソマリ|Tangoの話であったり なかったり(β版)

ソマリ

2017年7月15日

 12年前のこんな風に暑い夏のこと。朝まで飲んで新宿から歩いて帰る途中、一匹の子猫が僕の足に頭を擦りながら付いてきました。玄関の前まで付いて来て、ジーンズに爪を引っ掛けてよじ登るようにして抱っこをせがみ、初対面からこんなに人懐っこい猫を僕は見たことがなかったし、それ以上に外見がそこらの野良とはまるで違う。誰かが捨てたか逃げ出したか。既に情は移っていたのですが、僕はもう猫を飼っていたし、どうしたものかと思ったところ、子猫を飼いたがっている友人の存在を思い出し、朝の6時前だというのに電話をして、「興味がある」というので引き合わせ、最初は彼女も飼い主が見つかるまで......という感じで、電柱に写真付きの貼り紙を張るなどしながら育てていたのですが、結局名乗り出る人はあらわれず、一緒に生活をするようになったのでした。ちなみにその猫の品種はソマリであると、あとで聞きました。

 以来、その猫に会うことはなく、友人とも一年に一度会うかどうかといった感じで、もちろん会えば話には出ていたのですが、今日、買い物の帰りに歩いていると、突然、彼女から声を掛けられました。不自然に大きな段ボールを抱え、顔を見ると泣いていました。

「ええええ、こんなときに会うなんて、なんか絶対あるよぉぉぉ」

 その言葉で何が起きたのかはわかりました。僕は段ボールを受け取ると、駅の改札まででしたが運び、最期のお別れをしました。ひとりきりで火葬場へ向かう彼女の後ろ姿を見て、押し付けてしまったようで申し訳なかったような、幸せな時間を過ごしてきたことが背中から伝わってくるような、複雑な想いが致しました。彼女の言葉通り、出会いと別れの瞬間だけ居合わせた偶然に、何か意味はあったのでしょうか?

 とにかくお疲れ様。安らかにお休み下さい。