痕跡|Tangoの話であったり なかったり

痕跡

2017年9月15日

 先日、押入れに備え付けの本棚に置いてあった父の位牌と遺影を、居間に飾ってあるラジニカーントの黄金像の前に移し、別の日には墓参りへも行ってきました。そして昨日、レッスンのためスタジオに行くと、中から懐かしい人が現れました。僕とちょうど一週間違いでタンゴをはじめ、あまりにハマって、ダンスだけでなく、歌、バンドネオン、スペイン語と毎日代わる代わるレッスンを受けられ、家も引っ越して部屋の一部をダンスフロアにしてしまったというツワモノでございます。

 彼は僕の顔を見るなり、「お父さんに似てきたね!」と言いました。位牌の移動や墓参りの直後だったこともあって驚きつつ、この人はタンゴ繋がりのなかで父の顔を知る数少ない人物なんだよなあ......ということを思い出しました。彼はそんな僕の心境を察してか、「お父さんに紹介してもらった物件にまだ住んでるよ」と言いました。そう。父は晩年、知り合いの不動産屋の席をひとつ借りて、物件を扱っていたのです。ちなみにその縁があって、当時、麹町にあった会社を四谷に移し、僕自身も四谷へ越してくることにしたわけでございます。

 父に似てきたと言われたことと、父の紹介した物件にまだ住んでいる人がいると知ったことで(考えてみれば当然か)、父の痕跡を感じ嬉しく思いました。それにしてもなんなんでしょうねー。こういうことが続くと、なんらかのメッセージがあるのでは? と考えてしまうのです。