一日経って|Tangoの話であったり なかったり

一日経って

2022年9月25日
 Todo o Nadaが終わって一日が経ちました。たくさんの嬉しいコメントやメッセージを頂いていて、全然返事が追いついていません。本当にホントに有難うございます。
 僕自身の気持ちとしては、正直なところ無事に舞台の上で倒れることなく終えられた安堵感と悔しさばかり。いまも頭の中はTodo o Nadaのことで埋め尽くされていて、達成感とかそのあとの心にポッカリ穴が開いたような感覚もまだありません。
 ごらんになられたかたにはバレバレなので、今さら隠す必要もないというか、心配のメッセージも多く頂戴しているので素直に書きます。本番前日のリハの途中で右脚をやられました。診てもらったところ、腰から両方の足の裏までの筋肉が一斉にこむら返りを起こしていたようです。「二日間踊れるようにはしてあげるけど痛いのは我慢しとけよ」と脅されながら鍼とマッサージでなんとか歩けるようになったと思ったら今度は血尿が出て、それも血が混じるとかではなくて白い便器が真っ赤っか。恐いよりなによりバレたくないから必死に掃除しました。別の鍼の先生に聞いたらおそらく結石だろうって。なんでこんなときに......。あまりのツキの無さに、ほとほと自分に嫌気がさしました。
 昨年末の船上ミロンガでのデモンストレーションで最後まで脚が保たなかったことへのリベンジのつもりがどんどん話が大きくなってこの舞台になっていったわけなので、自分なりには身体づくりに力を入れてきましたが、付け焼刃の筋肉でどうにかなるレベルではなかったということなのでしょう。今回の僕のソロは、様々な困難を乗り越えてタンゴを踊るという設定だったのですが、最後の最後に立ちはだかったのは僕の身体でした。全細胞が「もう踊りたくない!」と悲鳴をあげているようで、特に二日目の昼公演はほぼ意識がありません。せめて舞台の上では演技をしたかったけどそれもかなわず、終わったあとはしばらく人生でも経験したことがないくらい嗚咽をもらしてました。
 あまりに悔しくて、また自分のせいで舞台が壊れてしまうかも知れない恐怖で、次に同じようなことがあったら舌を噛み切って死んで逃げようと思って迎えた千秋楽。最後の御挨拶のときにはひとりで立っていられなくて、情けなさと同時に(もうちょっとでゴールだったのに......)とボンヤリ箱根駅伝を思い出してました。楽屋に戻ると洋介さんから、「また舞台に立ちたいですか?」と聞かれ、「今は考えられないです。でも洋介さんはこんな経験何度もしてるんでしょ?」と聞き返しました。すると、「五体満足で舞台にあがれたことはないですね」と淡々と言ってて、あらためて自分の甘さを突き付けられました。
 僕は振付を覚えるスピードも人の何倍(何百倍)も遅かったし、現実に気持ちがいつも追いついてないし、そういう意味では本当に鈍いのだと思います。なので皆様からのメッセージが自分のことも含んで素直に考えられないというか、そんな風に考えるのは図に乗りすぎだろって気もしつつ、劇場まで足を運んで下さったことへ心の底から感謝しています。ダニエルは本当に厳しくて、それがどれだけ有難いことかもちゃんとわかってはいたのですが応えきれなくて申し訳ない気持ちと、彼の舞台へのこだわりが凄すぎてノイローゼになるんじゃないかってくらい大変でしたが、それとは比べ物にならないくらい成長させてもらいました。このお礼は、マリアニエベスやシルビアトスカーノ先生に対しての気持ち同様、今後のタンゴ人生をかけてお返ししたいと思っています。
【追記】
フライヤー裏面の別バージョン。この写真も思い出の一枚です。
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