おめでとうございます|Tangoの話であったり なかったり

おめでとうございます

2023年9月 7日
 21年前... だったかな。本の編集が一段落してアルゼンチンに行きました。理由はタンゴではなく普通に観光。一番の目的はイグアスの滝でした。
 立ち寄った先のブエノスアイレスで母と会い、タンゴミュージカルに誘われたのですが興味がないと断ったところ、「わたしの師匠にチケットを取ってもらったんだから、あなたが来ないとわたしの立場がない」と言われ、仕方なく着いていくことに。舞台中はほぼ寝てました。
 途中で目を覚ましたのは2回。ひとつはジュニールの決闘シーン(あとで知ったのですが、このとき実際に腕をズバッと切られて舞台を途中で降板。即救急車で運ばれたそうです)。もうひとつはマリアニエベスが踊ったLa Cumparsita。曲が鳴りはじめた瞬間、ただ歩いているだけなのにこんなにもワクワクさせられるものなのか、その美しさは人間の領域を超え神が歩いているように感じたものでした。だからかな。舞台が終わって母とマリアさんと飲みに行ったとき、酔っ払っていたのもあるのでしょうが、「一度僕にタンゴを教えて欲しい」と頼んでいました。
 マリアさんからは最初、「私のタンゴはすべてあなたのママに伝えているのだから彼女から習いなさい」と断られたのですが、「僕はあなたの踊りを見て感動したから頼んだのであって、母は関係ない」と生意気に言い返したところ、公演の合間を縫って教えて頂けることになり、指定されたスタジオに行ったら、「いま手を心臓より下にさげられないんだ」と笑いしながら腕を包帯でグルグル巻きにされたジュニオールとマリアさんが待っていました。
 これが僕のタンゴとの出会いです。レッスン後、「日本に帰っても続けなさいね」と言われたもののその後2年、まったくやらなかったんですけどね。再びブエノスアイレスへ戻ってきたときから、マリア先生からはタンゴの哲学のようなもの、シルビアトスカーノ先生からはタンゴの基本を学ぶようになり、マリアさんから教えてもらったあのLa Cumparsitaは今でも僕の宝物です。
 ずいぶん前置きが長くなりましたが、昨日はマリア先生の誕生日でした。僕はスペイン語がわからないので彼女のFacebookの投稿をChatGPTに翻訳してもらったところ、
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こんにちは、9月6日は私の誕生日を祝ってタンゴのダンサーの日です。
「タンゴダンスには特別な何かがあり、それはパートナー間のコミュニケーションです。だからこそ、私たちは愛だけでなく、嫌悪などさまざまな感情を感じながら踊るのです。
私はタンゴを踊るために生まれ、私のタンゴのために死ぬでしょう。」
すべてのタンゴダンサーにおめでとうございます!私のタンゴの心をお贈りします。
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とのことでした。
この言葉を使えるのは彼女しかいない。やっぱ神だわ......。
心からお誕生日おめでとうございます!