カベセオ(2)|Tangoの話であったり なかったり(β版)

カベセオ(2)

2018年3月22日

 以前、カベセオについて書かせて頂いたことがあったからでしょうか。先日、とあるお客様から相談を受けました。短くまとめると、「ミロンガには行きたいのだけどカベセオが苦手」という内容で、僕は、「だったらそのミロンガへ行かなければいいのでは?」と答えさせて頂きました。現在、都内だけで60ヶ所を超えようかというミロンガがあるなかで、どれだけの場所がカベセオを推奨しているかはわかりませんが、そんなところばかりではないと思ったからです。ミロンガのルールを決めるのはオーガナイザーですからね。その方が、「うちはカベセオオンリーです」と言われるのであれば、それは基本的に絶対なのです。

 とはいえ、それだけの答えでは身も蓋もないので、僕なりの考えを追加させて頂きました。内容としては前に書いたブログと同じなのですが、そもそもなぜカベセオをする意味があるかという部分でございます。僕はカベセオ研究家ではないので正確に歴史を紐解いて調べたわけではありませんが、おおよその見当はつきます。例えばアルゼンチンタンゴを習いはじめてグループレッスンに通い出し、友達ができて一緒にミロンガへ行くようになってそこでもまた知り合いができて、それまで仲良く声を掛け合って踊っていたのに、ある日突然、遠くから目にゴミが入ったかのようにパチクリさせながらコッチを凝視してきたら、それは相談しに来て下さった女性じゃなくても戸惑うかも知れません。前にも書きました通り、僕は臨機応変で良いと思っています。そもそもカベセオ推奨を謳っているミロンガのオーガナイザーさんが、「よう、〇〇ちゃん元気? ......踊ろっか」といった具合に、後ろでガッと目を見開いて頑張って慣れないカベセオを送っている男性のお客さんを尻目に誘っていたりするくらいですから。

 まず、踊りたい相手との距離感を考えることが大切なのではないでしょうか。ブエノスアイレスにもカベセオオンリーのミロンガがあって、そこでは例え夫婦であってもカベセオで踊ることになるわけですが、嫌ならカップル席を選ぶことができます。初対面の人の目の前にいきなりツカツカ出て行って誘うのはどうかと思いますが、それすら昔、友人の息子さんとミロンガへ行ったとき、「誘うときは失礼のないようにな!」と言ったら、突然、女性の目の前で片膝ついて手を差し出して誘ったことがありました。その女性は笑顔で手を取って、彼は「俺、今日タンゴはじめなんスよ」なんて言いながらフロアに出てて行って、それで不快感を与えていないならそれでいい。無理して慣れないことしてキャラが崩壊するよりずっとマシ......というよりも、むしろ彼にはその誘い方が合っていたと思ったものでございます。

 そしてもうひとつ。ある意味こちらこそが大事だと思っているのですが、例えるならカベセオとは、レストランで注文を取りたいときに店員さんに向かって目で合図を送るのと同じようなもので、それも苦手というならば、そこからトレーニングされるといいのではないでしょうか。相手は仕事ですから、断られることはないでしょうし......。しかし、どちらかというと、(本当は踊りたいんだけど、周りからがめついと思われないだろうか?)という不安がストレートな感情を押し殺してしまい、目を開いている割には感情が伝わらなかったり、フロアの方に目を向けられなかったりしているように思えます。がめついも何も、そもそも貴重な時間とお金を使ってタンゴを踊りに来ているわけですからね。下品にならないように堂々と踊りたいアピールをすればいいのですよ。

 ......なあんて偉そうなことを書いていますが、最初から恐くない人なんているのかな。まして単身、見知らぬミロンガへ乗り込んで行ってカベセオで勝負なんて滅茶苦茶カッコイイけどその分リスクも高いですからね。グループレッスンやワークショップに通ってタンゴ仲間を作って、少しずつハードルを上げていけばいいと思うのです。とにかく無理をしないこと。こんなところでストレスを感じるなんて勿体ないと、本気で思っているわけでございます。